Q 僧侶が反イスラーム運動を率いているという話も聞くのですが?
A.「マバタ」と呼ばれる一部の僧侶集団がイスラームを排斥する運動を展開しています。
ミャンマーは敬虔な上座仏教の国です。そこでは、親や僧侶、或いは年長者を敬うという強い習わしがあります。軍政はそんな人びとの篤い信仰心に報いるかのように装い、僧侶集団を優遇していました。
もっとも、上座仏教の戒律からすれば、僧侶は世俗の政(まつりごと)とは距離を置いているはずです。ところが、ここミャンマーでは、英国の植民地支配の独立闘争の勢力の一つに僧侶たちがいました。2011年の民政移管後、軍政の力が弱くなってきたのに比例して、その「マバタ」がナショナリズムを煽るようになってきました。この場合のナショナリズムというのは、国家主義・民族主義というよりも、上座仏教を強調する仏教至上主義の国家体制ということで
Q.「マバタ」は、どんな運動をしているのですか?
A. 2013年以降、宗教集団としてよりも、政治的な圧力集団として運動を活発化させています。仏教徒女性と異教徒の婚姻を制限する法案を通すよう政府に働きかけ、実際、実現させています。そのため外国メディアでも大きく報道されることもあり、実体以上に存在感を増しています。
その活動の中心にいるのが、マンダレーの「新マソーイェイン僧院」に暮らすウィラトゥ僧正です。米国の『タイム』誌(2013年6月)では、テロを煽る僧侶として取り上げられました。そのテロと結びつける米国的な発想から「ミャンマーのビン・ラディン」とも称されたりしました。
マンダレーに行った際、ウィラトゥ僧正に会いました。僧正の口調は穏やかで、過激な僧侶というイメージとはかけ離れています。「『タイム誌』の内容はデマ」と軽く笑い飛ばしていました。
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