4-2 住宅価格の相場
では、実際に住宅はどれぐらいの価格で取引きされているのだろうか?公表された統計など存在しないので、北朝鮮内部の調査を基に紹介したい。
90年代末頃、平壌でも地方の大都市でも、高級アパートは「1万ドルアパート」と呼ばれていた。その後市場の拡大により、計画経済の中では考えられなかった高額の現金収入を得る人たちが出現し、価格は上昇していく。
次に記すのは、2006年末にインタビューした北朝鮮第三の都市・清津(チョンジン)市の住民の証言だ。
「都市部では、平屋の一軒家の場合、駅や市場から近く、水道や電気供給の条件が良く、野菜を作ったり犬や豚を飼えたりする庭の広い家が好まれる。高層アパートはエレベーターもないし、電力難のせいで水道も出ないので人気がない。清津市や咸興市の場合、二間と台所の平屋が市中心部では3000ドル程度で売買される」。
韓国の慶尚大学社会科学研究院の学術研究教授チョン・ウニは、2011年から韓国に住む脱北者20人に面接して住宅取引の実態調査をした。チョンの調査によれば、住宅取引の相場は地域や間取り、築年数、取引の年などによって200米ドルから7000米ドルまで大きな差があった。大都市の幹部用に建設されたアパートが高く、農村が安かった。
筆者が2014年度に調査を依頼した咸鏡北道会寧(フェリョン)市の住民は、次のような報告を送ってきた。
「会寧市周辺の農村地域の場合、農村で一般的な庭を含め敷地70坪ほどの一戸建てならば2000万ウォン(2500米ドル程度)前後。アパートの相場も同じくらい。一方、交通が不便だったり、左官工事が雑だったりオンドル(床暖房)を備えていないなど追加の工事を要する家の場合、40~50坪の広さなら800万ウォン程度で取引されている。会寧市中心から遠く離れた農村では2世帯用の平屋に50坪ほどの庭が付いていて、きれいな家が500万ウォンだった。都市部から離れた交通不便な地域であっても、市場の近くにあれば70坪ほどの家が1500万ウォン前後で取引されている」
※(1万ウォン=約1.25米ドル/2014年3月初旬の実勢レート、筆者調べ)
なお、住宅取引は、基本は人民元や米ドルで行われ、農村では朝鮮ウォンでも取引きされることもあるとのことである。
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