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5-3情報統制に風穴
北朝鮮国民は、当局の検閲を経たもの以外、外国のテレビ、ラジオ放送や新聞、書籍、映像に接触する機会を徹底的に剥奪されて来た。中国吉林省で発行されている朝鮮語の新聞や本も北朝鮮国内には持ち込めず、入国審査で没収される。
テレビやラジオは北朝鮮の放送だけが視聴可能なようにチャンネルが固定されているし、北朝鮮を訪れる外国人との接触も厳しく統制される。政権が、外部情報の流入が体制維持にとって脅威だと考えているからに他ならない。
その情報統制の壁に、市場化の進展によって風穴が空くことになった。外部情報それ自体が商品として売買の対象となり、非合法に流通・普及していったのだ。2004年頃から、韓国の映画やトレンディドラマが大量に流入しブームを巻き起こしている。厳しい情報統制を潜り抜けて、どのようにして韓国の映像が北朝鮮に持ち込まれていくのか見てみよう。

韓国の主要地上波放送は、衛星でも同時放送されていて、パラボラアンテナとチューナーさえあれば、中国東北部や日本でも視聴することができる。北朝鮮ではもちろん視聴ご法度だ。韓国のドラマは中国朝鮮族の間でも大人気で、衛星放送でオンエアされた数日後には違法にコピーされて市場に並ぶ。当初は低画質のビデオCD、最近ではDVDで流通している。この韓国ドラマの海賊版がさらに複製されて、朝中国境の川・豆満江と鴨緑江を渡って北朝鮮に密輸されていくのだ。
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