飢えた兵士は泥棒になって

食料事情が悪化したため、兵士による犯罪が相次ぐようになった。協力者は次のように述べる。

「国 境警備隊員の兵士が、毎日のように畑から堂々とトウモロコシを盗んでいく。先日は、盗んだトウモロコシを焼いて食べているところを畑の見回り要員に見つ かった兵士たちが、『国を守っている人民の軍隊が少し食べたらだめなのか?』と逆上して、見回り要員を暴行した。一人は腕が折れ、もう一人は殴られて目も 開けられないほど顔が腫れ上がってしまった。農場幹部が軍部隊に行って抗議したが相手にされなかったため、上部に報告して騒ぎになった」。

北朝鮮各地で、兵士による民間人に対する暴行や窃盗犯罪が発生しているようだ。取材協力者は最新の報告で次のように伝えてきた。

「国境警備の勤務人員を除いた全ての兵士が、草取りのため農村動員に回されようになった。農場で昼食の一食だけは食べられるようになったのが幸いだ」。

(参考写真)巡回警備の点呼を受ける国境警備隊。豆満江上流で2004年8月撮影アジアプレス
(参考写真)巡回警備の点呼を受ける国境警備隊。豆満江上流で2004年8月撮影アジアプレス

 

現在、この国境警備部隊周辺の農場や他の地方都市では、食糧不足の兆候はまったく感知されておらず、金正恩政権が軍部隊に供給すべき食糧を確保できていないことが、人民軍の食料不足の原因だと考えられる。

※アジアプレスは、中国の携帯電話を北朝鮮内部に投入して連絡を取っている。

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