今年6月から東京を皮切りに全国各地で上映されている、古居みずえ監督のドキュメンタリー映画『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』が、大阪で上映中だ。福島県飯舘村から避難し、伊達市の仮設住宅で避難生活を送る女性たちに寄り添い、その暮らしを5年にわたって追い続けたドキュメンタリーだ。(アジアプレス編集部)
◆失ったふるさと せめて伝えていきたい
福島第一原子力発電所のある福島県浜通りから、内陸部に向かって車を小一時間ほど走らせると、桃源郷のように美しい田園地帯が開ける。しかし目を凝らせば、何年も手付かずの農地は荒れ果て、放射線汚染土を詰めたフレコンバッグがいたる所に積み上げられている。周囲を取り巻くのどかな山々は、除染作業もままならない高線量地帯だ。
福島県飯舘村。この日本有数の美しい山里が福島第一原発事故の被害で全村避難を強いられてから5年が過ぎた。今も県内外で避難生活を強いられている飯舘村民は、ふるさとの穏やかな暮らしを取り戻す希望と、それがかなわないかもしれないという不安の中で暮らす。
◆「笑ってねぇどやってらんねえ」
古居監督がカメラを向けた二人の“母ちゃん”は、しかし、空に響き渡るような声で高らかに笑ってばかりいる。よく笑い、よくしゃべり、毎日畑に通い、いろいろな料理を作り、よく食べる。そして何世代にも渡って育まれたふるさとの食文化を人に伝えることに心を砕く。その一つ一つに、自然の恵みの中で土とともに何十年と暮らした生き方が滲んでいる。
◆待ち望んだ帰村と、見合わない現実
政府は、2017年3月31日までの避難解除を性急にも決定し、飯舘村では除染作業と公共施設の建設が急ピッチで進められている。一方、仮設住宅に暮らす村民は、いまだ高線量の地区が残り、汚染土の詰まったフレコンバッグが農地を占拠している状況で、帰村準備が早々と進められていることに不安と怒りを隠さない。
帰村すれば、荒れ果てた家屋の再建、農業や牧畜の再開、そして、いまだ高い数値を示す放射線量への不安と向き合って生きていかなければならない。帰村しないことを選ぶなら、人間としての自立した生き方とは何かをこの先も問い続けていかなければならないだろう。それが福島の現実であり、遠い世界の出来事でも、過ぎ去った出来事でもないことを、この映画は教えてくれる。
◆自主上映のお問合せは 映画「飯舘村の母ちゃん」制作支援の会まで
電話 090-7408-5126 FAX 03-3209-8336
メール iitate.motherprojects@gmail.com
「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」公式HP http://www.iitate-mother.com/
でも詳しい情報をご覧いただけます。
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