「誰の命も大切で尊い」。知的障害のある長男の孝憲さんと恵照さん=2009年(岩井恵照さん提供)
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相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」殺傷事件からまもなく1カ月がたつ。障害を持つ子どもがいる奈良県の岩井恵照さんは「親にとって、障害があってもかけがえのないわが子であり、大切な命。障害者だから、という理由で殺されたり、排斥されたりすることはあってはならない」と訴える。(矢野宏/新聞うずみ火)

◆奈良県五条市 岩井恵照さん/生かし生かされ尊い命

「津久井やまゆり園」で障害のある人たちが19人も殺害され、多数の方が怪我を負う痛ましい事件が起きました。被害者の方々の恐怖や苦痛を思うと、やり場のない怒りや無念・不安などで胸がつぶれそうです。被害者のご家族の悲しみを考えると激しい憤りを覚えます。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、そのご家族にはお悔やみ申し上げ、けがを負われた方々が一日も早く回復されることを願います。

容疑者は、自分で助けを呼べない重度の障害者を次々に襲い、傷つけ、命を奪いました。とても残酷で、決して許されることではありません。その上、「障害者は役に立たないからいなくなればいい。安楽死にするべき」などという身勝手な主張をしていると報道され、それを支持する声もあるとか。

とんでもありません。障害者が何をしたというのでしょう。なぜ、障害者が殺されなければならないのでしょう。障害者に生まれたくて生まれた人はいませんし、障害者を生みたくて生んだ親もいません。たまたま何かのめぐり合わせで障害を背負って生を受けただけなのです。

障害者の親は、わが子の障害を知って苦悩の時を過ごします。やがて、その真実を受け入れ、わが子の成長のために努力を惜しまず全力で支え続けます。親にとって、障害があってもかけがえのないわが子であり、大切な命なのです。障害者だから、という理由で殺されたり、排斥されたりすることはあってはならないことです。

障害者は、その障害のある部分では健常者より劣っているかもしれません。周りの人たちの手助けを必要とします。でも、よく考えてみてください。人間としての価値はただそれだけではないはずです。重い障害を背負っていても、素晴らしい生き方をされている方がたくさんおられます。

「世の中には無用なものは一つもない。すべてのものは適所におかれたならば最上のものとなり、ほとんど無用のように見えるものでも、他のものに力を与えるとともにその支えにもなる」と、米国の詩人、ロングフェローも言っています。

秀でた人も平凡な人も、障害のある人もない人も、いろんな人がいるからこそ、この世の中が成り立っているのです。障害を背負った人を含め、一人ひとりが、後にも先にもない世の中にたった一人の大切な尊い存在です。お互いに生かし生かされつつある尊い存在だと思います。誰の命も大切で尊いのです。

自分自身が大切ならば、周りの人たちもそれぞれに大切なのです。自分も、周りの人たちもそれぞれに大切で尊いのです。周りの人たちを見直してみてください。それぞれの値打ちに輝いているのに気づくはずです。

この特異な事件で世の中が変わってしまわないように、と願っています。障害を背負っている人の素晴らしい光を世の中に届けるために、関係者が今まで通りの信念で手を携えて歩んでいかなければと思います。(了)
(矢野宏/新聞うずみ火)

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