◆地下鉄・六番町駅 当初公表の100倍以上のアスベスト飛散
2013年12月、名古屋市の地下鉄・六番町駅で起きたアスベスト飛散事故は、これまで最大で空気1リットルあたり700本のクロシドライト(青石綿)とされてきたが、実際には1リットルあたり7万5000本というとんでもない濃度だったことが明らかになった。(井部正之)
新たな測定データは筆者が名古屋市に対して実施した情報公開請求により判明した。
同市交通局は市営地下鉄・六番町駅の換気機械室のアスベスト除去工事を2013年12月から実施した。ところが、現場を外気から遮断して密閉し、アスベストの除去を開始した同12月12日から翌13日にかけて、駅構内にもっとも発がん性の高い青石綿が飛散した。
当時の発表ではこの際のアスベストの飛散は最大で1リットルあたり700本とされた(アスベスト以外の繊維も含む「総繊維濃度」では同1100本)。今回情報公開により入手した分析データは、同じ試料を改めて透過型電子顕微鏡(TEM)で分析したものだ。
2015年5月28日付けで市に報告された分析結果によると、アスベスト濃度はすでに述べたように1リットルあたり7万5000本というとんでもない高濃度であった。
かねて測定データが存在するアスベスト飛散事故としては「過去最悪」とされてきたが、当初発表の100倍超に更新したことになる。
分析結果がこれほど高濃度だった理由の1つは、この分析が光学顕微鏡では視認できない微少なアスベスト繊維まで数えているためだ。しかし、通常の計数方法である、長さ5マイクロメートル(マイクロ=μは100万分の1。1000分の1ミリメートル)以上、直径0.2~3マイクロメートル未満に限っても、1リットルあたり3100本となる。この測定値でも当初発表の4倍超であり、やはりワースト記録の更新は間違いない。
◆検討会に1年以上も報告せず
市は2014年5月以降、この飛散事故の健康影響について外部有識者による「六番町駅アスベスト飛散にかかる健康対策等検討会」(座長:那須民江・中部大学生命健康科学部スポーツ保健医療学科教授)で検証してきた。
もともと今回委託した、通常よりもさらに微細・微少なアスベストの同定は同検討会で委員の1人が実施を求めたものだ。問題は、市が2015年5月末には今回の分析結果を入手していながら、1年以上にわたって同検討会でも報告せず、実質的にその存在を“隠ぺい”してきたことにある。
名古屋市交通局営繕課の濱田祥孝課長に質すと「隠してないです。決して放置しておいたということではない。検討会で諮る予定でいた」と否定する。
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