この水野氏とは、スポーツ用品メーカー「ミズノ」の元会長のことだ。招致に関する歴史的な記録が、大企業のトップとは言え、一民間人に託されているわけだ。では、水野氏は、資料を保管する義務や必要に応じて開示する義務があるのか?前述の担当者は、「分からない」と話した。
この「ブラックタイディングス」への不透明な支払いについては、既にフランスの捜査機関が調査に乗り出しているという。これについて、捜査権が及ばない日本にまで捜査のメスは入らないという指摘もあるが、多額の税金が投入された行事に関する重要な資料が一民間人に託され、それがどうなっているのか誰も把握していないわけだ。状況は今後改善されるのだろうか。
残念ながら、そうならないことは現状が物語っている。前述のように招致委員会は解散しており、現在は「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」(以下組織委員会)となっている。ところが、組織委員会も情報公開請求の対象となっていないのだ。つまり今後も議論の中身が市民に公開されることはないのである。
小池知事にまず求められるのは、支出のチェックのみならず、こうした隠ぺい体質とも言えるあり方を変えて、常に情報が開示されるよう仕組みを作りなおすことだろう。
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