8月末の豪雨により深刻な被害を受けた咸鏡北道の被災地では、水害復旧に動員された他地域の人員による窃盗強盗被害が発生、食糧価格も急騰して混乱が深 まっていると、北朝鮮の内部の複数の取材協力者が伝えた。家族を失った住民が自殺する事件もあったという。(カン・ジウォン/ペク・チャンリョン)
◆当局、被災者に出勤強要 家族失い自殺する人も
9月21日、被災地域の近くに住むアジアプレスの取材協力者A氏は、現在の被災地の状況を次のように報告してきた。
「家族と家を失った被災者は他人の家に同居したり、農場の宣伝室や会議室などで集団宿泊したりする状況だ。だが、当局が被災した人にも出勤を強要したた め、『今、仕事ができる状況か』と反発して集団で出勤を拒否する出来事があった。9月12日には、穏城(オンソン)郡の南陽(ナミャン)労働者区では、水 害で二人の子供と母親、妻を失った男性が絶望して首を吊って自殺する事件が発生した」と被害住民の状況を伝えた。
鉄道労働者が流された線路の復旧に当たっているとされる写真。2016年9月21日付け労働新聞より引用。
◆当局「泥棒、強盗は家族まで追放」と厳罰策
被災地には、復旧作業のために政府の命令で多くの人員が動員されているが、現地にテントを張って宿泊しているとA氏は言う。問題は、彼らによる窃盗や強盗などの犯罪被害が続出していることだ。
協力者A氏は、「水害復旧のために組織された『突撃隊』による犯罪が多発しため、当局は『窃盗、強盗行為者を出した組織の責任者は、解任して党を除名させる。犯罪を行った者は、家族全員を追放する』と強い警告を出した」と、被災地の混乱状況について述べた。
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