電灯もなく安全でないジャンマダンは、日没と同時に閉場し商人らはすべて帰ってしまう。この日没の頃、丸一日物乞いがうまくいかなかったコチェビらは極度の不安に陥り、一番弱い獲物を探して群がり攻撃するのだ。豆腐やトウモロコシの麺が容器ごとひっくり返されて、あっという間にだめになった。半分以上は汚れた地面に散らかった。
がっしりした突撃隊格のコチェビの男が真黒い手でソバの器を奪い取り、そのまま胸の懐に注ぎ込んで逃げていった。女店主が立ち上がって男を追いかけ出すと、大人、子供、また片脚を失っていたり、栄養失調にかかっていたりと、様々な姿のコチェビの群れが、残された幼い娘が守る商売の品に、略奪するために飛びついた。
ソバ商売の幼い娘が上げる悲鳴が私の耳に痛く刺し込んだ。コチェビらは汚い地面に落ちて散らばったソバの麺や豆腐のかけらに競い合って群がる。まるで野良犬のように、我先に食べようと喧嘩をしながらすっかり食べてしまう。うつわまでなめ回して食べてしまうのだ。
「アボジ(お父さん)…」
私の後に隠れていた少女の悲しい呟き声に、目前で繰り広げられた、まるで人の皮を被った野良犬の群れによる略奪を見て茫然自失だった私は現実に戻った。
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