「シラミちゃん」とのやり取りを記録しようと思い立ち、首からビデオカメラをぶら下げてジャンパーの中に隠し、スイッチを入れて「シラミちゃん」が来るのを待った。写真は、その時に撮影したものである。
4歳だという「シラミちゃん」は、私からお菓子を受け取ると、「コマプスムニダ」(有難うございます)と言ってぺこりと頭を下げた。「コチェビ」少女が律儀に挨拶するのが、私にはちょっとした驚きだった。
モニタリング活動をなんとか終えて中国に出国した私は、北朝鮮から非合法に越境して来た人たちの聞き取り調査を再開した。インタビューさせてもらった40代の女性に、「シラミちゃん」とのささやかな「交流」のことを話した。母親でもある彼女はこう言った。
「その子は、親が死んだか、別れたかして間もないはずですよ。だって礼のしつけを守っているんですから」
あれから18年。「シラミちゃん」のことが、今でも時々思い出される。(石丸次郎)
【関連記事】
◆ <北朝鮮写真報告>抵抗する庶民たち 警官を罵倒し突き飛ばす女性(写真6枚)
◆ <北朝鮮写真報告>哀しき北朝鮮の女性たち 路地裏の女性たちの微笑み撮った(写真3枚)
◆ 「苦難の行軍」とは何だったのか? ある脱北知識人が経験した飢饉の正体 金日成の死で始まった社会パニック パク・ヨン
おすすめ<北朝鮮> 写真特集・無料動画…
1 2