◆取り調べ可視化 負の代償

5月に成立した「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」は「取り調べ可視化」を口実に盗聴法を改悪し、司法取引の導入など、新たに権力に強大な権限を付与した司法大改悪です。

ジャーナリストの山口正紀さん(撮影・樋口元義さん)
ジャーナリストの山口正紀さん(撮影・樋口元義さん)

法案の出発点は冤罪ラッシュでした。2007年、鹿児島の志布志事件、富山の氷見事件など冤罪事件が続発し、10年から3年連続で足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件と再審無罪が確定しました。10年には厚労省の村木厚子さんが無罪。大阪地検の証拠改 ざんが発覚し、日本の刑事司法を見直すべきだという声が高まりました。

11年5月、民主党政権の江田五月法相(当時)が法制審議会に諮問し、特別部会が設置されました。可視化を具体的に検討してほしいという趣旨でしたが、警察・検察側の委員が「全面可視化」に強硬に反対し、「可視化すると供述を取れなくなる。それに代わる武器が必要」などと主張し始めます。14年9月の答申は、可視化の対象を全事件の数パーセントにとどめる一方、警察の権限を拡大するものになってしまいました。

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