◆不買運動やデモも対象に?

今回の共謀罪法案は、これまで廃案となったものと本質的には変わらない。

「名称を『テロ等組織犯罪準備罪』としたのは、テロ対策を前面に押し出して国民に広くアピールする狙いでしょう。だが、法律の通称名に『テロ等』とあるように今後、摘発の対象が広がる可能性もあります。また、適用の対象も絞り込み、過去の法案では単に『団体』となっていたが、『組織的犯罪集団』と変更しています。とはいえ、組織的犯罪集団の定義はあいまいで、認定するのは捜査機関が判断することになっています」

政府は「対象は暴力団や犯罪団体であり、一般市民ではない」と主張するが、永嶋さんは否定する。

「新入生に一気飲みさせる相談をすると、『組織的犯罪処罰法』『組織的強要』になり、PTAなどで悪徳企業の商品を買うのをやめる相談をすると、『組織的犯罪処罰法』『組織的業務妨害』の共謀罪に問われます。また、高価な相続品を税務署に申告しない相談をすると、『相続税法』『相続税等の免税』の共謀罪になりかねません」

特に、労働組合や市民団体が狙われるだろうという。

「電力会社の前で『反原発』のビラをまく相談をすると、『組織的犯罪処罰法』『組織的業務妨害』の共謀罪に問われ、要求に応じるまで社長を缶詰めにして交渉する相談をしても『組織的犯罪処罰法』『組織的監禁』、組合事務所のコピー機を私用で使う相談をしても『刑法』『業務上横領』の共謀罪です」

メディアも例外ではない。

「根拠が薄いのに暴露記事を書く相談をしたら、『組織的犯罪処罰法』『組織的信用毀損』の共謀罪に問われる可能性が出てきます。これまでの共謀罪を巡る不安は解消されていません。誰に何をしゃべっていいのか、わからなくなる。人と人との間がぎくしゃくする。しかも、自首すると、自分だけは免除になるのだから、自由に議論することが犯罪とされる社会に変わる可能性も出てきます」(続く)

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