2016年11月8日のアメリカ国民の選択は、世界にどのような影響を与えるのか。日本の安倍首相はいち早く訪米して次期大統領と会談を行うという。しかし、その前に安倍首相は、日本の立場を日本国民はもちろん、世界に対して発信すべきではないのか? 実は、それをした国もある。ドイツだ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相はドナルド・トランプ氏の当選後すぐに声明を出し、それが世界の注目を浴びている。(アイ・アジア編集部)

ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏(ドイツ政府のHPより)
ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏(ドイツ政府のHPより)

メルケル主張の声明は、2016年11月9日、首相官邸で発表された。佛教大学の野崎敏郎教授が翻訳した声明文を、許諾をえて掲載する。

「お集まりのみなさん、私は、アメリカ合衆国大統領選挙の勝利者であるドナルド・トランプに対して、当選を祝します。

アメリカ合衆国は、敬意を表すべき古くからの民主制国家であります。本年の大統領選挙は、部分的にはほとんど耐えられないほどの対決状況を伴う特別な選挙でした。それだけに私は、たぶんここにいらっしゃるみなさんの大半がそうであったように、格別の緊張感をもって選挙結果を待ちました。

アメリカ国民が自由・公正な選挙において誰を大統領に選出するかは、アメリカ合衆国の領域をはるかに超えた意味を有しています。我われドイツ国民にとっては、EU外の国でアメリカ合衆国ほど、我われと深い結びつきを持っている国はないと言って間違いないでしょう。

強力な経済力、軍事的潜勢力、文化的影響力をもってこの大国を統治する者は、ほとんど全世界中において感知せられるべき責任を負うことになります。アメリカの女性たち、男性たちは、来年からの4年間、この責任をドナルド・トランプに負わせるという決断を下しました。

民主主義、自由、法にたいする畏敬、人間の尊厳にたいする畏敬、出自あるいは肌の色や宗教や性や性的志向性や政治的立場に囚われないこと――こうしたさまざまな価値によって、ドイツとアメリカは結びついています。こうした価値を基礎として、私は、アメリカ合衆国次期大統領であるドナルド・トランプに、緊密な共同・協力を提供することを約束します。

ドイツにおける、ヨーロッパにおける、そして世界における経済的・社会的幸福をめざす努力、先見的な環境政策への尽力、テロリズム・貧困・飢餓・病弊にたいする闘争、平和と自由のための動員――この時代のこうした大きな諸課題を、我われドイツ国民が果たしうるためのドイツ外交の礎石のひとつがアメリカ合衆国との協力関係であり、今後もそうでありつづけます。ご清聴に感謝します」

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