イラン国会は11月23日、これまで極刑で臨んだ麻薬犯罪者への刑罰を一部減刑する法案を可決した。写真は首都テヘランの近代的な街並み(撮影筆者)
イラン国会は11月23日、これまで極刑で臨んだ麻薬犯罪者への刑罰を一部減刑する法案を可決した。写真は首都テヘランの近代的な街並み(撮影筆者)

 

イラン国会は23日、既存の麻薬取締法に補足条項を加える形で、これまで死刑の対象だった麻薬犯罪者への減刑を可能にする法案を賛成多数で可決した。(アジアプレス/大村一朗)

この麻薬取締法の改訂では、武装した密輸入、組織的麻薬犯罪の首謀者、麻薬犯罪の再犯者、大量の薬物所持の4つの事例を除き、これまでの極刑判決を禁固25年から30年に減刑する。この改訂により、同国の麻薬犯罪者の死刑執行の80パーセントがなくなると予想されている。

◆法改訂への経緯

麻薬犯罪における死刑の廃止または減刑を求める法改訂案は、今年1月の第9期国会に一度提出されたが不成立となった。麻薬犯罪における極刑の有効性を唱える声は依然多く、そうした主張は主に、処刑が麻薬犯罪の抑止に効果がないことが専門的な調査によって明らかにされたわけではなく、国際的な圧力によるものだからとしている。

こうした中、当時のモフセニー・エッジェイー検事総長はこの問題について、「我が国の麻薬密輸に関する処刑の多さと量刑の重さは不吉である。麻薬組織の首謀者を厳罰に処し、その他については見直すことが現行法で出来るのなら、麻薬に関する我々の目的はより達成されるだろう」と発言した。

また、アーモリー・ラーリージャーニー司法府長官は、「麻薬密輸に関する法は神の啓示ではないが、処刑がまったく意味を持たないというのは間違いだ。もし司法府の厳罰と警察の協力がなければ、状況はもっと悪く、いまごろ自然薬品店でも麻薬が見つかっていただろう。死刑そのものが望ましいものとは思わないし、麻薬に関する法律は今一度検証されなければならないことは認める。死刑に変わる有効な処罰がない限りは、死刑を完全には否定することはできない」と述べている。

こうした司法府高官らの発言も追い風となり、ここ数カ月間、メディアもこの問題を多く取り上げるようになっていた。そして今期第10期国会において、一部の事例に死刑を維持する形で、麻薬取締法改訂法案が提出され、11月23日に賛成147、反対21、無効4で可決されるに至った。同法案は今後、専門委員会で検証され、最終決定される見通しだ。(おわり)

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