◆夫はすでに強制送還 妻と子ども2人が残留特別許可を求める
不法入国を理由に強制退去を命じられているペルー人の女性(50)と日本で生まれ育った2人の子どもたちが10月14日、大阪市内で支援団体とともに記者会見し、残留特別許可を認めてほしいと訴えた。ペルー人の夫はすでに本国へ強制送還されている。(矢野宏/新聞うずみ火)
支援団体によると、強制送還されたパスクアル・デラクルスさん(59)は1991年、ペルー内戦で反政府組織から命を狙われていると感じて出国、偽造旅券で日本に入国した。妻のネリ・モレノさん(50)は94年に不法入国し、その後、2人の子どもが生まれた。パスクアルさんは日雇い仕事や鉄工所などで働いていたが、2011年に入管難民法違反容疑で逮捕された。
翌12年、家族全員に対し大阪入国管理局から退去強制命令が出されたため、一家は処分取り消しを求めて提訴したが、一審、二審とも敗訴。昨年、最高裁でも上告が退けられ、パスクアルさんは今年9月、ペルーへ強制送還された。
会見でネリさんは、不法入国について謝罪した上で、「子どもたちは日本語しか話せず、スペイン語はわかりません。ペルーに戻ったら子どもたちの将来が閉ざされてしまう。せめて子どもたちだけでも助けてください」と涙ながらに話した。
法務省によると、不法残留者数は今年1月現在で6万2818人。1993年5月のピーク時に29万8646人を記録して以降、減少が続いていたが、前年から2年連続で増加に転じている。
不法残留者は、運転免許証取得や国民健康保険加入が認められないだけでなく、児童扶養手当も受けられない。銀行口座が原則開設できないなど、権利が厳しく制限される。ネリさん一家のこれまでの生活の一端が忍ばれる。
翌15日付新聞各紙が、この会見の様子を伝えたところ、ネット上では批判の言葉が渦巻いた。「なんで日本が外国人犯罪者の家族まで面倒見る必要があるんだ」「子どもは被害者だが親が悪い」などのほか、「欧米なら認めるし、入れるべき」という書き込みもあった。
支援団体はネット上にあふれる排外主義を憂いつつ、「ネリさんの意思を尊重したい」と語っている。
出頭命令を受けたネリさんは17日、大阪入管で面談を受けた。その席で「12月には帰りなさい。自分で帰らないと、3人を強制帰国させる」と言い渡されたという。
中学1年の長男は「僕の両親を助けてください。僕たち姉弟を助けてください」と声を詰まらせ、中学3年の長女は、高校受験を控えて不安を抱えた胸の内を語り、「父が日本人の名前を私につけてくれました。両親は不法入国したのだから、子どもも一緒にペルーへ行けと言われましたが、私たちは日本で生まれ育ったのだから、ここが故郷なのです。学校にも友達がたくさんいます。家族と一緒に日本で暮らしたい」と訴えた。【矢野宏/新聞うずみ火】
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