韓国で11月から拡大を続けていた朴槿恵(パク・クネ)大統領退陣要求デモの画像を、朝鮮中央テレビが、画像にモザイクをかけて放送していた。
モザイクがかけられていたのは、12月3日に朝鮮中央テレビが放送した「朴槿恵逆徒は欺瞞的な『談話』遊びを止めて即刻退陣しなければならない」と題された対談番組だ。
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デモや集会の様子を約20点の静止画像で紹介しながら13分余り放映したが、ソウル中心部の高層ビルや、光化門広場にある李舜臣(イ・スンシン)将軍と世宗(セジョン)大王の銅像にモザイクをかけていた。
(李舜臣将軍は豊臣秀吉の朝鮮出兵軍を撃退した英雄。世宗大王は15世紀にハングルを創製した)
不自然なモザイクをかけたのは、金正恩政権が、韓国の反朴槿恵闘争の高揚を北朝鮮住民に積極的に知らせたい一方で、韓国の発展ぶりが確認できる情報は隠したかったからだと思われる。
李舜臣や世宗大王は、北朝鮮でも英雄として知られており、学校でも教えられている。しかし、金日成―金正日とその母金正淑(キム・ジョンスク)以外の銅像が都市の中心に建てられることはあり得ない。北朝鮮では三人こそが「絶世の偉人」であり、唯一の尊敬対象なのである。
とはいえ、四百~五百年前の英雄の銅像がソウルにあるという事実が国内に知られたとして、大した影響があるとは考えにくい。この番組の検閲担当者は、後に万一にも批判される事態を避けるため、上部の意向を過度に忖度(そんたく)してモザイクをかけたのではないだろうか。
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