◆戦闘員と強制結婚、暴行を受ける日々

ISに拉致され、強制結婚させられたヤズディ教徒の女性サリマ(仮名)。“夫”から繰り返し暴行を受けた(ドイツ北部で2016年4月、玉本英子撮影)

 

昨年末、ドイツのメルケル首相は国民に向けたメッセージで、国内で相次いだイスラム過激主義者による事件を振りかえり、過酷な一年だったと述べた。テロ問題に揺れる一方で難民受け入れ政策で、助かった人も多数いる。イラクから避難してきた19歳の女性を、ドイツ北部で取材した。(玉本英子)

過激派組織「イスラム国」(IS)は2014年8月、イラク北部シンジャルで少数宗教のヤズディ教徒を襲撃、1000人を超える住民が殺害された。

サリマ(仮名)は、あの日の光景が忘れられない。武装した覆面姿の男たちが町を取り囲み、逃げようとした住民を拘束した。女性はモスルへと送られた。収容先のホールには、すでに多くのヤズディ女性が詰め込まれていて、戦闘員は若い娘や小学生ほどの女児をまず連れ出した。泣き叫ぶ声が響いた。

彼女を選んだのは、シリア国境近くに暮らす20代のアラブ人の男。すでに妻と4人の子どもがいたが、サリマは「第二夫人」にされた。繰り返し性行為を強要し、本妻からは家畜のように扱われた。

「悪魔信仰のお前たちを、改宗させて救ってやった。ありがたく思え」と彼は言い、ヤズディを殺すため、銃を撃ち続けたからだと、と腫れた指先を見せて笑った。

自殺すると泣き叫んだサリマをなだめようと、クルド自治区に避難した姉へ電話をかけることが許された。しかし自由に話すこともできず、元気でいると伝えるのがやっとだった。「もう殺されてもいい」と深夜に家から抜け出したところを見つかり、何度も殴られた。ひどい頭痛で体調不良に陥った。
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