国にしてもそうだが、日本においては行政主導の検討会では会合前に担当者が委員を訪れて意見調整や方向性の根回しをするのが常態化している。名古屋市においても同様で、市交通局は公式には認めないが、会合前に委員を訪れて説明したり、前もって資料や案の修正をごく当たり前におこなっている。委員による非公開の打ち合わせも実施されている。

事前説明については検討会で委員から「事前にも説明うかがってますので」などと前置きをした発言が複数回あり明らかだ。非公開会合についても検討会において開催する意向が明らかにされている。

市交通局は否定するが、そうした場で委員やあるいは市側の意向によって重要な取り決めがなされてきたとしか考えられないのである。そこではおそらく筆者が指摘した問題点についてもなんらか検討がされているのかもしれないが、公開の場で示されない限り、一般には知ることはできない。

そもそもこの間の検討会では非公開とする必要性のある検討事項などなかったはずだ。透明性がない形で重要事項が決まってしまうとしたら、それこそいったいなんのための検討会なのか。検討会の存在意義が問われよう。

まともな検討会なら、終了前に公表される報告書でそういった経緯がある程度明らかにされるはずだが、それすらない。

なぜ当初説明されていた「5割増し」の安全率はないままシミュレーションが実施されたのか。なぜ濃度上昇による最悪の想定をしないのか。なぜ念を入れて安全率を採用しないのか──。検討過程の透明性が確保されていないため、数々の疑問が宙に浮いたままとなってしまっている。

残念ながら今回の検討会では検討過程の透明性が確保されたとはいい難い。市民とのリスクコミュニケーションを重視する委員もいたが、その前に検討過程の透明化が必要なのではないだろうか。そうした前提なしに市民の理解や納得が本当に得られるのだろうか疑問である。

せめて報告書で非公開の打ち合わせでどのような情報をもとにどんな理由でなにを取捨選択したのか、それらを公にすることを求めたい。それが明らかにならなければ、公的な検討会として歴史の検証に耐えられない。決定プロセスの透明性なしに市民の信頼など得られるわけがない。つづく【井部正之】

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