外国からの訪朝者が、平壌で見たり接触したりする市民は、一様にこざっぱりした装いである。みすぼらしい姿の人はほとんど目にすることはない。平壌市に住む別の取材協力者ク・グァンホ氏は、その「カラクリ」について次のように言う。
「外国人が訪れるような行事のある時は、外出時には人から借りてでもきれいな服を着なければなりません。服装がみすぼらしかったり、大荷物のある人は、地下鉄駅で検問を受け中心部に向かう地下鉄に乗ることすらできません。まず背嚢(はいのう)を背負っていると絶対だめ。コチェビ(ホームレス)ももちろんアウト。仮にうまくすり抜けても、中心部の駅でも検問をしていて留め置かれるのです」(※写真2)
ただ、この15年で平壌市民の服装が大きく変わりカラフルになったのは事実だ。1990年代に衣料品生産の大半がストップ、市場経済の拡大とともに、市場を席巻した中国産のカラフルな衣料品が流通するようになったからだ。
平壌市内では兵士の姿をあまり見かけない。韓国では、休暇中の若い兵士が居酒屋で飲んでいる姿を当たり前に目にするのと対照的だ。ク・グァンホ氏など平壌の取材協力者たちによれば、平壌市内では、軍人は基本的に軍服姿で歩き回ることが禁じられており、部隊の移動の際は平服に着替えさせられる。外国人の目を気にしてのことだという。(※写真3)
極めつけは、街角に立って服装を検査する風紀取締り組織「糾察隊」(きゅうさつたい)だ。この風紀取締りは、平壌だけではなく地方都市でも行っている。青年同盟や女性同盟、職場から選抜された人員で組織され、「自由主義」が酷い服装…ジーンズ、スリムズボン、丈の短いスカート、韓国風の髪型、ピアス、茶髪毛染めなどは厳しく注意を受け、罰金を取られることもある。
「悪質」と判断されると、その場で服をずたずたに切られることもあるという。平壌では、みすぼらしい服装も取締り対象で、中心部から隔離されることもある。(※写真4)
お分かりいただけただろう。平壌市街と市民の見栄えよく見せるために、北朝鮮当局は大変なコストと労力をかけているのである。(続く)
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