1998年元山市。アジアプレスが撮影した大社会混乱期=「苦難の行軍」期の映像を見ると、市場に出てきた女性たちは、皆一様に疲れた表情で座っている。日焼けして黒く、化粧気のない顔ばかりである。当時、家族を養うために商売に身を投じた女性たちには、身だしなみに気を使う余裕がなかったのである。
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2003年に商売が合法化されると、彼女たちにも少しずつ余裕が出て、化粧をして身なりを飾り始めた。市場では、韓国、中国、日本製の化粧品が売られていた。化粧品を売る女性は、客に熱心に商品の説明をする。
男性は職場に出勤しないと罰せられるため、女性たちが市場の主役だ。乳児を抱いて食べ物を売る女性も、日傘をさして化粧をするのを忘れない。路地裏で商売する女性たちには、しっかりメイクしている人が多い。
平壌に住む取材協力者の女性は次のように言う。
「ろくなものを食べていなくとも、胃袋の中まで他人には見えません。人は外見で判断しますから、女性たちは化粧と服装に神経を使うのです。やはり、男性からは綺麗に見られたいものなんです」
今では、北朝鮮のどこの都市に行っても、きれいに化粧した女性たちの姿は珍しくない。まだ北朝鮮の庶民暮らしは厳しい。だが、暮らしの糧を得るための「闘い」の中で、女性たちは身だしなみに随分気を使うようになった。
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