また自首と密告を大々的に呼び掛け、取引も持ち掛けているという。

「保衛部に自首した者と、逮捕した覚醒剤犯が関連者5人以上を白状すれば刑期を短縮すると取引を持ち掛けている。それでどんどん捜査が進んで捕まる者が増え、保衛部や保安署の拘留施設はもちろん、労働鍛錬隊も覚醒剤犯で一杯で座る場所ががないほどだ」
とのことだ。

「自首する者、密告する者が少なくない。中には夫や家族の罪を白状する者も出ている。覚醒剤の常習者と売人は死刑になるという噂が流れているが、銃殺されたという話は聞かない」
という。

幹部の中にも密輸や販売など覚醒剤犯罪に手を染める者がいる。両江道恵山市に住む取材協力者は、そんな悪徳幹部たちは既に手を打っていると、地元の事情を次のように話す。

「3月20日にヘタン洞(恵山市南端の地区)で5人が逮捕され、今、関係した者が芋づる式に捕まっている。覚醒剤使用や密売と関わっている幹部たちは密売人を他地域に避難させたり、コネを使って捕まった者を釈放させたりしている。実際、ソンフ洞(市の北に位置する区域)の知り合いの保安員は、捜査情報を事前に密売人に知らせ、出張名目で他所に避難させた」。

これら厳重な取締りが、北部国境地域だけで行われていることなのか定かではないが、薬物犯罪者だけ収容する「管理所」まで設置されたことから、全国的に一斉に実施されている可能性が高いだろう。

北朝鮮の覚醒剤汚染はまことに深刻。廃人になった者も少なくないだろう。金正恩政権がその根絶を目指すのであれば評価したいが、不正腐敗という別の深刻な汚染にまみれた北朝鮮社会で、この度の集中取り締まりがどれほど効果を上げられるか、注目したい。

※アジアプレスでは、北朝鮮内部に中国キャリアの携帯電話を送って国内事情を調査している。

【関連記事】
あまりに深刻な覚醒剤汚染 中学生から警察官まで
<北朝鮮>ドローンに怯える金正恩政権が撃墜訓練始める 暗殺、空撮、情報散布を警戒

おすすめ<北朝鮮> 写真特集・無料動画… 

★新着記事