取材協力者は3月21日、当局の現金供出強要について次のように伝えた。
「人民班で『黎明通り』建設を支援するため、現金を出すよう指示がありました。(金額は)地区によって違いますが、余裕のある地区では中国元で20~30ウォンずつ出しました(世帯毎と思われる)。金持ちや不法商売をしている人たちの中には、豚を何頭も供出したり、作業用の手袋1000個を出した人もいます」。
※中国10元は約160円
支援金の強要に住民たちに不満はないのかとの問いに対して、協力者は
「不満があってもどうしようもないんです。幹部や治安機関の人間たちの圧力があるから。それでも、『金なんてない』と逆らって払わない人もいました」
と、当局の強制的な徴収だったと証言した。
一方、建設作業に動員させられることを憂慮する人もいた。昨年8月末に咸鏡北道で発生した水害の復旧作業に多くの人が無理に動員されたため、完工期限が迫っている「黎明通り」建設に、また投入されるのではないか心配だと言うのだ。
労働党員で組織する「党員突撃隊」に入れられ二カ月近く水害被災地の住宅建設工事に動員された別の取材協力者は、
「金を使ってでも、何らかの口実を作ってでも、『黎明通り』の建設には絶対行きたくない」
と心情を吐露した。
金正恩氏は当初、「黎明通り」建設を2016年末までに完工するよう指示していたが、水害復旧と対北朝鮮制裁の影響などで計画どおり進んでおらず、期限は4月15日に延期されていた。金正恩政権としては、核開発に対する国際社会の制裁が強まる中でも、経済建設も民心も揺ぎがないことをアピールするために、「黎明通り」完工を優先させているものと思われる。
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