◆密告におびえて暮らす
ISはスパイ網を張り巡らせていましたから、密告で捕まった人も少なくないと思います。小さい子どももスパイとして使っていました。お小遣いをあげて、住民情報を集めるのです。そうやって強力な監視システムを構築していたのです。
そのため、近所の人とも自由に話すことはできませんでした。誰が密告するか分からなかったからです。そこからISに伝わって処罰されるかもしれないからです。私の向かいの家の人ですが、家の若者がISの悪口を言ったことが知られ、鞭打ち刑にされていました。それはISが支配して間もない頃だったのでまだよかったほうです。それから2年がたつと、処罰が厳しくなり、悪口だけで処刑される人もいました。私はイスラム教徒ですが、彼らの統治は時間が経つほど、宗教とかけ離れたものになっていき、処罰も厳罰化されました。力のない住民には、どうすることもできず、ただ耐えるしかできませんでした。(つづく)

窃盗などの罪は公開の場で右腕を切断する刑罰が加えられた。手首を縛り、引っ張ってナタで切り落とす。奥の男がナタを手にしているのが見える。(モスル・2016年・IS映像)
宗教警察(ヒスバ)の任務は、アルコール類とタバコの摘発など宗教道徳取締りや犯罪捜査に加え、食品の賞味期限・消費期限のチェックなどもある。写真は商店で消費期限を確認する係官。茶色のベストが制服。(モスル・2016年・IS映像)
同性愛者を建物の屋上から突き落として処刑する宗教警察(ヒスバ)。落とされたのちに、路上でさらに戦闘員らが石を投げつける。茶色いベストの背中には「イスラム国ニナワ県ヒスバ」とある。(モスル・2016年・IS映像)

 

<<< 第2回  │  第4回 >>>

(9終) IS去ったモスルのこれから(写真9枚)
(8) 当初、ISを受け入れたモスル住民も~「気づいたときは遅かった」(写真12枚)
(7) IS支配下での礼拝とモスク(写真8枚)
(6)「モスル解放」のなかであいつぐ報復(写真11枚)
(5) 衛星テレビ視聴禁止布告~住民統制強まる(写真14枚)
(4) 学校での洗脳恐れ、通学やめさせた家庭も(写真9枚)
(3) 宗教警察が社会統制(写真10枚)
(2)シーア派やキリスト教徒住民への迫害(写真7枚)
(1)たった数日間の戦闘で町のすべてを支配(写真7枚)

【関連記事】
<イラク・モスル報告>子どもたちが見た公開処刑 IS去っても生活厳しく(写真6枚)
<イラク最新報告>戦闘の狭間で苦しむモスル市民~兄はISに殺害、父は空爆で死亡(写真2枚)
〔イラク現地報告〕イスラム国(IS)支配下のモスル住民に聞く(1)「戦闘員は宗教とはかけ離れた人たち」

 

★新着記事