イラク・モスルを掌握したイスラム国(IS)は、独自解釈のイスラム法(シャリーア)に基づく統治体制を固めていく。宗教警察による道徳や風紀の取締りは、社会生活の隅々にまで及んだ。「私はイスラム教徒ですが、彼らの統治は時間が経つほど、宗教とかけ離れたものになっていった」と話す、モスル大学教員、サアド・アル・ハヤート氏(47)。インタビューの3回目。(聞き手:玉本英子・アジアプレス)
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◆社会風紀や道徳から服装まで指示
ISは女児を除くすべての女性に対し、黒いヒジャーブの着用を義務付けました。のちに男性には、あごヒゲを生やすことも求めらるようになります。次第に様々な規則がいくつも作られ、ズボンの裾の高さも地面から15センチ以上の短いズボンをはくよう強制されました。彼らが言うには、「イスラム法ではそう決まっているから」ということでした。町のあちこちで宗教警察(ヒスバ)が巡回し、監視していましたので従うしかありませんでした。
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(2017年2月末モスル市内で撮影:玉本英子)
◆公開処刑
モスルで多くの公開処刑が行なわれていたことは知っています。市場の近くとか人が集まるような場所で毎日のようにありました。ISは盗みを働いた者の腕を切り落としたり、スパイとみなした者を斬首していました。私は見たくなかったので、そういう場所には近づきませんでしたが、鞭打ちされる男性を見たことがあります。革のような硬い鞭で叩かれていました。タバコを吸った罪ということでした。モスルでは「同性愛の罪」として男性を高いビルから突き落としていました。どのようにそういう人たちを探して摘発したのかは分かりません。ISはウソをついているかもしれないですから、処刑された人が同性愛者だったかどうかもわかりません。
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