大阪市の学校法人「森友学園」への国有地売却や学校認可をめぐり、政治家の介入や官僚の忖度はあったのか、安倍首相夫妻はどこまで関与していたのかなど、疑惑は何一つ解明されていない。この問題は、森友学園のような「戦前回帰的な教育」を目指す動きが身近に迫っていることを私たちに突きつけた。幕引きを許してはいけない。(矢野 宏/新聞うずみ火)
◆「日本会議」の役割
春の入学シーズンを過ぎたが、注目された大阪・豊中市の国有地には、完成間近で工事が中断された朱色の木造風校舎が取り残されている。もし、疑惑追及の声が上がらなかったら、この4月には「教育勅語を学校教育の柱に据えた」小学校が開校していたはずだ。
証人喚問のあとも新たな疑惑が浮上している森友学園。これまでの流れを振り返ると、豊中市議の木村真さんが、国有地売却額を非公表とした近畿財務局の決定を不服として大阪地裁に提訴したのが2月8日だった。翌日の朝日新聞が提訴の事実とともに、売却額を1億3400万円と報じた。評価額は9億5600万円だが、ごみの撤去費用という名目で8億円あまりが値引きされていた事実も判明した。
その後、国会でも連日取り上げられ、政治家の関与や官僚の忖度があったのではないかなど、さまざまな疑惑が噴出。さらに、森友学園が運営する塚本幼稚園で、教育勅語の暗唱のほか、運動会で「日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史教科書でうそを教えないようお願いします」などと園児らに選手宣誓させている動画が流れ、世間の関心は一気に高まった。
3月16日には森友学園の籠池泰典理事長(当時)が「安倍首相から100万円の寄付を受けた」と発言。「首相を侮辱した」として自民党の怒りを買い、23日の証人喚問に。その席で、籠池氏は「安倍昭恵夫人付きの政府職員からファックスを受け取った」と証言し、安倍首相夫妻の関与があったのではないかという疑惑はますます深まった。野党は昭恵夫人の証人喚問を要求し続けているが、官邸や自民党は応じようともしない。
この問題で名前が浮かんだ人たちに共通するのは「日本会議」である。
日本会議とは、改憲を推し進める日本最大の右翼組織。3万8000人の会員を擁し、安倍首相が特別顧問をつとめる「日本会議国会議員懇談会」のほかに、1600人を超える地方議員による「日本会議地方議員連盟」や「美しい日本の憲法をつくる会」など、草の根の右翼運動を展開している。
次のページ:また、神社本庁の政治組織「神道政治連盟」と...