沖縄県の地元紙「沖縄タイムス」社編集局が、このほど『これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地』を高文研から刊行した。「基地がなければ沖縄経済は破綻する」「他県より予算をもらいすぎている」「普天間飛行場は田んぼの中にできた」――。インターネット上などに飛び交う沖縄の米軍基地に関するデマや誤解、誹謗中傷を取り上げ、徹底的に反証した。(栗原佳子/新聞うずみ火)
◆「正しい情報をもとに議論を」
昨年1月から8月まで紙面に掲載された連載企画「誤解だらけの沖縄基地」を書籍化した。
連載に取り組むきっかけは、一昨年6月、自民党若手議員の勉強会で、講師として招かれた作家の百田尚樹氏が放った発言だった。「普天間飛行場は何もない田んぼの中にあった。基地の周りにいけば商売になると、みんな住みだした」「基地地主はみんな年収何千万円で、六本木ヒルズに住んでいる」――。
実際は、普天間飛行場が作られた場所には8880人が住んでいた。村役場や国民学校があり、宜野湾並松(ジノーンナンマチ)と呼ばれる街道が走る生活の中心地だった。軍用地料についても、半数以上の地主が年間100万円未満というのが実態である。
にもかかわらず、事実とかけ離れた言説が、政権与党の勉強会という公式の場で、人気作家によって「本当のこと」のように語られ、拡散されていった。しかも、ネット上では、沖縄や沖縄の基地をめぐるデマや誤解が広く流通している。取材班は、こうした誤った情報について、一つひとつ丁寧に検証しようと試みた。「見解の相違ではなく、明らかに間違いだろうというものを取り上げ、具体的なデータや歴史的な事実、専門家の意見などを織り交ぜて反証した」と取材班の福元大輔記者は振り返る。
在日米軍、基地経済、「普天間」、海兵隊の抑止力、日米地位協定などの分野で約40項目のQ&Aに集約した。例えば、「辺野古」反対運動に日当が出ているという「噂」がある。記者たちは現地に赴き、座り込む人たちの声を聞く。抗議団体にも取材し、帳簿を子細に確認するなどして念入りに裏付けをとっていく。
そうした取材の中で、座り込み参加者が交通費も弁当代もすべて自腹でまかなっていること、なかには生活費を切り詰めながら切実な思いで通う人たちがいることなどが明らかにされる。
Q&Aの多くは、沖縄の人にとって周知のこと。紙面でも書き尽くされてきた、いわば「旧聞」に類するものだ。デスクを担当した与那原良彦政経部長はこう話す。
「これまで何度も書かれてきたことを繰り返し書くことによって、正しい情報を伝えたかった。沖縄の基地問題に対する考え方の違いはあっていいが、正しい情報をもとに議論して、判断してほしい」
『これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地』高文研刊1700円+税。
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