共に民主党予備選候補者たち。左から崔星、李在明、文在寅、安熙正。文候補以外の三人は知事、市長の職にあり選挙応援ができないことも文候補にとっては痛手だ。文在寅氏のフェイスブックより。

安哲秀陣営も反撃「文在寅は第二の李会昌」
躍進を続ける安哲秀候補側は、比較的落ち着いた環境の中で選挙戦を戦っている。とはいえ、文在寅陣営の攻撃を黙って受け止めている訳ではない。文候補に対し、「文在寅候補の長男の就職あっせん疑惑」、「故盧武鉉大統領の長男の義父の飲酒運転事故隠蔽疑惑」などを連日追及している。やはりこれらも現段階では疑惑に過ぎない点を明記しておく。

また、文在寅候補本人に対しては、朴智元(パク・チウォン)国民の党代表が連日フェイスブックに、文候補を批判する投稿を行っている。朝にも晩にも批判の手を緩めないことから、「文モーニング」「文イブニング」と呼ばれ半ば笑い話ともなっているが、手厳しい内容も多い。

10日には文候補に対し「なぜそこまでして、第二の李会昌(イ・フェチャン、過去三度大統領選に挑戦し全敗)候補の道を歩むのか。李候補が過去(2002年)、大統領当選が確実といった風に傲慢な行動を取り、相手の盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補は無視し、金大中(キム・デジュン)元大統領を攻撃し続けた挙句に落選したことを覚えていないのか」と語りかける余裕を見せつけた。

現在の展開は安哲秀氏に有利
筆者もよく「誰が大統領になるのか」と聞かれるが、答えようがない。ただ、今の状況は安哲秀候補に有利であることは確かだ。文在寅候補は支持率が減りも増えもしない中、安候補は倍増している。しかも、特段の手だてをとっていない中での増加である。新しい主張を付け加えた訳ではない。

安哲秀候補は4月6日にあった「寛勲クラブ」主催の討論会で「朴槿恵政権の発足に手を貸した勢力は今回の政権はあきらめるべき」とし、自由韓国党や正しい政党とは選挙戦において手を結ばない方針を明確にした。一方で「大蕩平(18世紀の李朝時代の政策で、党派に均等な人事登用のこと)」を強調し、当選後には党派にこだわらず、有能な人材を登用することを約束した。

これらは、高度な戦略だと韓国メディアで評価されている。つまり、表向きには李明博・朴槿恵周辺の保守勢力と距離を置き差別化しつつも、政権運用の際には手を結ぶこともあると示唆することで、保守層の安心を呼び、安候補への支持に向かわせるという仕組みだ。

同じ「大蕩平」という言葉を文在寅候補も予備選で使ったが、こちらは長く中央から除外されてきた湖南地域の人材に向けての呼びかけだったことを考えると、安氏の「広がり」の一端が理解できる。
次のページ:4月17日の世論調査に命運...

★新着記事