◆群衆の前で公開処刑
アンワル君と友人たちは、ISが町を統治していた頃の様子を話す。ひげを生やしてないから、と茶色いベストの宗教警察(ヒスバ)に連れていかれた人がいた。処罰は何十回もの鞭(むち)打ちだった。一方で、お金を払って見逃してもらった人もいたという。公開の処刑では広場に人が集められ、泥棒の罪で、おので腕を切り落とされる人を見た。不審者や同性愛者の情報収集や密告には地区の子どもも動員された。
「淫らなことをした」と、女の人が戦闘員から石を投げつけられて殺され、「同性愛者」として高いビルから突き落とされる男の人も見た。少年たちは、若い男たちが「神の裁きだ」と歓声をあげるのを見て、自分も興奮したと話した。「広場で人の首を切られたり、砲撃や空爆が続く毎日が続いた。モスルが昔のように戻るのはずっと先のことかもれない」。そう言って、アンワル君は再び鉄くず拾いに戻った。【モスル・玉本英子】
(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」5月9日付記事を加筆修正したものです)
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