◆ISが教育カリキュラム改編し現場が混乱
武装組織イスラム国(IS)の支配が続いたイラク北部モスル。ISの統治のもとで、学校教育もISの指導に沿ったものへと改編されていった。小・中学校では「子供が過激主義に洗脳される」と通学をやめさせる家庭があいついだ。モスル大学では学部によっては女子が排除されるなど混乱が起きていた。IS統治下のモスルで、2年半にわたって暮らし、支配の実態を見続けたモスル大学教員サアド・アル・ハヤート氏(47)の連続インタビュー、第4回目。(聞き手:玉本英子・アジアプレス)
【サアド氏】
私には2人の娘がいます。上は中学1年生で、下はまだ小学校低学年でした。ISがモスルの支配をすすめてからも、1年間、娘たちは学校へ通っていました。IS支配下でも、これまでと同じイラク政府の教科書を使った通常の勉強が続けられていたからです。私の地区では女子児童の登校は許されていました。
それが2015年、ISはすべての教育カリキュラムをISのやり方に変え、先生たちに強制しました。多くは教職を離れましたが、生活のためや、ISに脅されて従うしかなかった先生たちは残りました。美術の授業はなくなり、イスラム教の授業が増えました。
この時に、多くの子どもたちが学校へ行かなくなりました。ISから何を教え込まれるのか分からないのを恐れた親たちが登校をやめさせたのです。ISに従いながらも、そのカリキュラムに同意できなかった先生の中には、子どもたちに登校をやめるよう、こっそり伝える人もいました。ISは子どもたちを強制的にISの学校へ入れさせようとはしなかったため、結果的に多くの小中学校が閉鎖されました。
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