◆国の不可思議な主張
5月19日、「家族の会」らとの話し合いに応じた厚労省労働基準局総務課石綿対策室の矢野裕介・企画調整係長は2時間以上にわたって「無用な誤解を招くのでできない」と繰り返した。
同省のいう「無用な誤解」とは一体なんだろうか。
「国の考えとしては、直接リーフレット受け取ったが、最終的に和解要件を満たさなかった場合に、誤解や混乱を招くとの問題がある」
「国からリーフレットが直接届いたことで一定の期待をさせてしまう」
というのが、矢野係長の説明だ。
国が実施している周知の取り組みとしては、リーフレットのほか、病院などに頼んで貼ってもらっているポスターもある。
支援者の1人は「それは病院で見てもいっしょ。ポスター貼ったやつが悪いとなる。そうしたら国からきたポスターを病院が貼ったらまずいとなりますよ。そうなると周知自体できなくなる。それは周知そのものを否定してますよ」と反論した。
さらに「実例はあるのか」と参加者の1人が聞くと、「現時点でトラブル等は発生していません」という。
泉南アスベスト訴訟の弁護団の1人は「仮に誤解があるとしても、賠償の権利をなくしてしまうほうが不利益が大きいから送らないといけないでしょと話をしている。誤解も混乱も招くと実際にはそんなの起きてないのに言うのはおかしい。理由になっていない」と追及した。
だが、同省は「(賠償の対象ではない人が)訴訟費用を負わなければならないというトラブルは起こすべきではない」と繰り返す。
「トラブルなんて起きない。告知したほうが被害者救済になるのは明らかじゃないですか」
だが、同省の担当者は延々と同じ回答を繰り返すだけだ。そんな無限ループが2時間あまり続いた。
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