◆非公開会合でリスクコミュニケーション検討

環境省が2月に開催した指針を説明するフォーラムのようす。席の半分近くが空いているのに、定員超過を理由に参加を断られた人が少なくない(撮影・井部正之)

環境省が4月末に公表した建築物の改修・解体時などのアスベスト(石綿)飛散を防止するための説明会や話し合いの手順などを定めた指針に対し、130人超が「非公開で定めたのはおかしい」とパブリックコメントで批判していたことが明らかになった。(井部正之/アジアプレス)

この指針は「建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン」。もともと2013年2月に中央環境審議会石綿飛散防止専門委員会が出した「石綿の飛散防止対策の更なる強化について」との中間答申で、「住民等への説明会等の実施といった更なる自主的な情報開示の取組」について検討するよう同省に要請。同省は2年間にわたって、ガイドラインを策定する検討会を実施してきた。

ところが、この「石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン策定等検討会」(座長:小林悦夫・ひょうご環境創造協会顧問)はすべて非公開とされ、検討会の資料や議事録どころか、委員構成、検討会の実施予定すら明かされていなかった。しかも、委員は自治体と事業者の関係者ばかりで占められ、当初は環境リスクコミュニケーションの専門家すら入っていなかった。

リスクコミュニケーションを推進するガイドラインの検討を非公開で実施するなど、ありえない話だが、残念ながら事実である。同省の異常な主張など詳細は以下の拙稿をご参考いただきたい。

◆批判だらけのリスクコミュニケーション指針

さて、今回、環境省が公表したのは検討会がまとめたガイドラインと、公表前に実施したインターネット上における意見募集、パブリックコメント(パブコメ)結果である。
パブコメで国側に意見を送ったのは164団体・個人で、意見の数は実に870件という異例の多さだ。とくに「リスクコミュニケーションについての検討会が非公開とはおかしい」「検討会は公開とすること」との当然の指摘がそれぞれ136件に上り、意見を送った団体・個人の82.9%に達する。

環境省大気環境課は「不適切事例についても詳細な情報提供をいただけるよう、検討会については非公開としました」などとパブコメと併せて公表された「意見に対する考え方」で答えているが、まったく回答になっていない。固有名詞を匿名にすれば済む話であることは委員すら認めている。

そもそも同課が所管し、公開で実施された2012年の石綿飛散防止専門委員会でも、固有名詞を匿名にした上で不適正事例が詳細に語られているし、ほかの省庁における検討会でもそうしたことはごく当たり前に実施されている。詳細は前出の拙稿(環境省の「隠蔽」体質を問う(1) 非公開にされたリスクコミュニケーション検討会)で指摘した通りで、同省の主張は明らかにおかしいといわざるを得ない。

さらに126団体・個人(76.8%)は「住民が気付いた時にはすでに解体が終わってガレキだけだった、という実態が横行している」と触れ、現状のアスベスト規制が不十分だとして「法改正が必要」と指摘した。

国側は今回の指針通りの対応をすれば、「周辺住民等に必要な情報は提供されるものと考えています」と主張する。

上記の意見は今回の指針はあくまで自主的な対応でしかなく、現在の規制では指針通りの対応を事業者に求める「強制力」がないことを問題にしているのであり、指摘に対してきちんと回答していない。

規制の改善を求める意見はほかにも少なからずあり、たとえば130団体・個人(79.3%)が「レベル3建材の規制を行うべき」と、現在大気汚染防止法で規制対象外となっている「レベル3建材」といわれるスレートなど石綿含有成形板の規制を求めている。また、17団体・個人(10.4%)が「住民が指名する者が事前調査の確認と完了検査のために立ち入りができるようにすべき」と工事の安全性・透明性確保のために規制強化が必要と指摘した。これらについては今回のパブコメ対象外だとして同省は回答もしていない。パブコメ内容にご興味があれば、以下「建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン(案)」に対する意見の概要と意見に対する考え方 で直接ご覧いただきたい。
結局、パブコメによって指針の大幅な変更はなかった。
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