◆「ISに見つからぬよう密かに視聴を続けた」
武装組織「イスラム国」(IS)がイラク・モスルの統治を開始したのは2014年6月。当初、市民は携帯電話も使え、衛星テレビも視聴ができた。ところが社会統制は日を追うごとに厳しくなり、衛星テレビ視聴禁止と機材接収の布告まで出される。イラクやシリアでは一般放送といえば衛星受信を指すため、住民の目耳がふさがれることになった。IS統治下のモスルで、2年半にわたって暮らし続けたモスル大学教員、サアド・アル・ハヤート氏(47)が支配の実態を語る。連続インタビュー第5回目。(聞き手:玉本英子・アジアプレス)
【サアド氏】
私の勤め先のモスル大学の工学部が閉鎖され、職を失った私は家にこもって論文などを書いていました。年老いた母と叔母、私の兄弟2人と、妻と2人の娘の計8人で暮らしました。
兄もモスル大学で教員をしていました。のちに兄の学部も閉鎖されて、仕事がなくなってしまいました。しかし、1年間(2015年6月まで)は、IS支配下であっても、イラク中央政府が支給していた給料を、職場を通じて継続して受け取ることができました。
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