米国国防省によると、「対テロ戦争」での米軍の戦死者は6855人、戦傷5万2351人(2015年7月28日)である。民間軍事会社で雇用されている「民間人」の死者は、2933人~6285人、負傷者は、2万5839人~5万5373人(2012年12月31日)に上る(7)。
この数は、保険金を請求した人の数である。そのような請求を、米国に所在する雇用主に対して現地で採用された地元の人たちが行うのは難しい。彼らは、米軍に「協力」したことで身に危険が及ぶこともあるが、死傷者数をはじめその状況を米軍は把握していない。(続く)
(1) Joshua Key and Lawrence Hill, The Deserter's Tale: The Story of an Ordinary Soldier Who Walked Away from the War in Iraq (New York: Atlantic Monthly Press, 2007)〔ジョシュア・キー(井手真也訳)『イラク米軍脱走兵、真実の告発』(合同出版、2008年)〕、イラクで2003年4月に18歳で戦死したアンディは、重量挙げ用のグローブがほしくて、海兵隊の資料を請求したのだった。 Jürgen Todenhöfer, Andy und Marwa. Zwei Kinder und der Krieg (München: Bertelsmann Verlag, 2005)〔ユルゲン・トーデンヘーファー(平野卿子訳)『アンディとマルワ―イラク戦争を生きた二人の子ども』(岩波書店、2008年)〕。
(2) 現実には、この制度を利用するためには前金を支払う必要があり、また、高騰する学費すべてを賄える額ではない。貧困地域では、そもそも高校までに十分な学力を身につけられていない人も少なくない。怪我や病気で契約期間を全うできなかった場合、奨学金は受けられない。大学に入学できる人は限られているうえ、卒業するのはさらに少数にとどまる。
(3) 布施祐二『経済的徴兵制』集英社、2015年ほか。
(4) Amy E. Street, “A new generation of women veterans: Stressors faced by women deployed to Iraq and Afghanistan,” Clinical Psychology Review, Vol. 29 (2009), p. 686.
(5) The Development, Relief, and Education for Alien Minors (DREAM) Act. 米軍は、人員不足を補い、グローバルな戦争に対応するために、移民を重要な人材供給源として位置づけている。Molly F. McIntosh, Seema Sayala, Non-Citizens in the Enlisted U.S. Military, CRM D0025768.A2/Final, November 2011.
(6) 堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』岩波書店、2008年。
(7) 現地の人たちの犠牲は、イラクで死者15万~17万人(2003年~2015年)、アフガニスタンで死者2万5000人(2007年~2015年)と推計される。現地の人たちの犠牲のほうが圧倒的に多いことを指摘しておきたい。
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