◆大阪・泉南アスベスト国賠訴訟和解後は「すべて救済せよ」
「除斥の4人のうち、2人が1995年の5月と9月に亡くなっていて、(2014年12月の)国との和解後に除斥となっています」(榮弁護士)
厚労省が2年半にわたって個別周知を拒否してきた結果、実際に国に対する損害賠償の請求権を失った人が出ていたのである。
上記の集団訴訟で2016年12月に第1陣の38人が国を提訴し、それから2カ月足らずの2月に第2陣の27人が提訴となったのは「1月に除斥になる人がいたのであわてて準備ができた人だけ12月に提訴した。だから2陣までの期間が短い」(同上)と除斥直前のギリギリの提訴だった。
被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(古川和子会長)事務局の片岡明彦氏は「(泉南原告と和解した)2014年12月26日以降の除斥は国に責任がある。個別周知が必要なことは始めから指摘しており、その間に除斥になった人についても提訴してもらって国が和解に応じるべきだ」と指摘する。
前出・榮弁護士も「国が除斥の人にも提訴してよいといえば、後に続く方の道筋はできる。同じような人はほかにもいらっしゃるはず。周知徹底しなかった国が悪いのですから、そうした方針を出していただきたい」と期待を寄せる。
同省が個別周知を拒否していた間の「家族の会」らとの話し合いで、被害者側から「国が個別周知を拒否している間にもどんどん除斥になる人が増えているはず。現在の周知が不十分なことは認めている以上、国が泉南原告との和解条項にある被害者への周知を履行しなかった不作為が生じている。その不作為について改めて国賠訴訟しろというのか」と怒りの声が上がっていた。
“除斥ねらい”ではないと国側は「家族の会」らに説明してきたが、本当にそうなら泉南原告との和解以降に除斥となった被害者との和解に応じるべきだろう。あるいは新たな国賠訴訟で争えということだろうか。【井部正之/アジアプレス】
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