◆「イメージが悪くなり、開学しても学生が集まらないのではないか」
今治市の人口は約16万人。県内2番目の人口を誇り、四国でも4つの県庁所在地に次ぐ5番目の自治体であり、製造品出荷額が四国で唯一、1兆円を超えた製造業の街でもある(14年調査)。特産のタオルは国内シェアの6割弱を占め、造船も国内建造の3分の1を占めている。それでも人口流出が続き、人口減に苦しんでいる。今治市は瀬戸内の中核都市として人口20万都市を目指しているが、1975年をピークに減少。将来推計人口(2013年3月)によると、2040年には28.5パーセント減少し、約11万3000人になる見込みだという。
「衝撃だったのが、今治が『消滅可能性都市』に入ったこと」というのは、今治市と新居浜市でフリーペーパーを発行する「マイタウン今治新聞社」社長の井出千尋さん。
日本創成会議・人口減少問題検討分科会の推計によると、少子高齢化に加え、大都市への人口流出が重なり、40年頃には若い女性の人口が半分以下になる市町村が896にも及ぶという。今治市もその一つに数えられていた。
「今治市にすれば、大学に来てほしい。加計学園による獣医学部の新設計画には、人口減少に歯止めをかけたい今治市にとっては『渡りに船』だった」という井出さん。すでに、学生や教員向けのマンションを建てている人もいるという。
大学誘致で地域振興に成功した街がある。立命館アジア太平洋大学を誘致した大分県別府市。別府湾を望む山の中腹に開校したのは00年のこと。80カ国から3000人の学生が集まる国際色豊かな大学である。総事業費300億円のうち、県が150億円、別府市が42億円を拠出し、大学用地も無償提供された。減り続けていた人口は開校以降、増加に転じ、約13万人を維持している。教職員の人件費や学生などの支出などで経済効果は年間211億円という。
視察した井出さんが振り返る。
「できる前までは『こんなところに学生が来てくれるのか』とか、『今さら大学を建てても環境破壊だけ』などと批判する市民も多かったらしいが、今では『大学ができてよかった』という声に変わっていた」
それゆえ、気がかりなのは加計学園問題の政局化。獣医学部の定員は全国最大の160人。教員は70人を想定している。「今後、ますますイメージが悪くなり、開学しても学生が集まらないのではないか」という不安が募る。
「加計学園が来た方がいいのか、荒地のままで置いていた方がいいのかというたら、来なかったら大変なことになっていたと思う」(つづく)【矢野 宏/新聞うずみ火】
>>><加計学園問題> 愛媛県今治市・建設予定地から見えるもの2 期待一転 政局で暗雲
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