爆弾テロがあったおおみそかの夜も、バグダッドの夜空には、新年を祝う花火が何度も打ち上げられた。大通りには人があふれ、賑わいを見せていた。長年続く「身近な死の風景」は、怒りや悲しみへの共感よりも、死者と生者との間の溝を徐々に広げているのではないか。死者の影を遠ざけ、おぼつかない未来を必死に探る。それが、長い戦乱の日常を生きるバグダッドの人々の生きる術なのだろうか。(2017年1月、バグダッドにて)(了)【綿井健陽】
≪2017年2月、共同通信から全国の加盟紙に配信した記事からの転載≫
1 2