◆信仰心とISの宗教指導のはざまで苦悩
武装組織「イスラム国」(IS)のイラクでの最大拠点都市だったモスル。昨年10月に始まったイラク政府軍の奪還作戦の結果、市内のほとんどの地区から排除され、今月、政府側は作戦の勝利を宣言した。3年に及ぶISの「モスル統治」では、独自に解釈したイスラム法のもと、モスクでの礼拝が徹底された。イスラム教徒で、大学教員のサアド・アル・ハヤート氏(47歳)は、ISの強いる宗教の姿と、自身の信仰心のはざまで苦悩する。サアド氏との連続インタビュー(7回目)。(聞き手:玉本英子・アジアプレス)
【サアド氏】
ISの宗教警察(ヒスバ)は、通りで市民に対し、1日5回モスクへ行って祈らなければならないと言っていました。信仰深い人は以前からそうしていましたが、かつては礼拝するかしないかは個人の選択にゆだねられていました。ところがISは住民全体に対する命令として布告しました。祈りの時間、モスルにあるすべての店が閉じられました。その時間にモスクへ行かず、通りを歩いたら厳しく詰問されたり、なかには捕まった人もいるということが知れ渡るようになりました。
私は、ISが支配する前、中央市場にあるモスクへよく行っていました。ISのモスル制圧後、しばらくすると、これまでの教導師(イマーム)がモスクからいなくなりました。そしてISを支持する教導師に代わったのです。モスルでは見たこともないような顔つきをした各国からの外国人戦闘員の姿も増えてきました。
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