英国・米国における兵役拒否数

第二次世界大戦中に開発された核兵器の存在は、人類の存続さえも危ぶませるものであった。第二次世界大戦後の国際連合憲章(1945年)2条4項は、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と規定して、武力による威嚇および武力の行使を原則的に違法であるとしている。

この二つの大戦で戦ったのは、職業軍人よりも圧倒的に多数の一般の人々だった。第一次世界大戦(1914~1918年)では7000万人、第二次大戦(1939~1945年)では1億490万人の国民が動員され、それぞれ1000万人、1700万人の兵員が戦病死したと推計されている。

動員された人々の中には、兵役を拒否した人々もあった。多くの人々が兵役にかわる代替役務に従事した。その信念ゆえに命を落とした人々も少なくない(表1)。両大戦では、兵役拒否者がそれまでにない多数となったのみならず、その理由も宗教的な信仰の他に、個人の信念に基づくものが登場した。

彼らの存在が、戦後の兵役拒否権を人権として承認する道筋を示すこととなった。英国、北ヨーロッパ諸国、米国では、第一次世界大戦期以降に、武器を持ってする役務を免除する立法を行ってきた(4)。

(1) 兵役拒否の歴史・分類・事例などについては、市川ひろみ『兵役拒否の思想―市民的不服従の理念と展開―』明石書店、2007年、参照。
(2) 渡辺久丸『兵役拒否の人権化は世界の流れ』文理閣、2009年、他参照。
(3) Andrea Ellner, Paul Robinson, David Whetham ed., When Soldiers Say No: Selective Conscientious Objection in the Modern Military, Ashgate Publishing Limited,2014, p.2~3.
(4)  ヨーロッパにおける第二次世界大戦までの兵役拒否承認年。イギリス1916年、デンマーク1917年、スウェーデン1920年、ノルウェー1922年、フィンランド1931年。European Bureau for Conscientious Objection(EBCO), Annual Report: Conscientious Objection to military service in Europe 2015, p.36. http://ebco-beoc.org/sites/ebco-beoc.org/files/attachments/2015_EBCO_REPO (2016年4月10日閲覧)

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