◆理事長の加計孝太郎氏は、安倍首相自ら「腹心の友」と呼ぶ間柄

現在建設中の加計学園獣医学部。「国家戦略特区で大学をつくるのに、なぜ、自治体が全額負担しなければならないのか」の声も。(撮影・矢野 宏/新聞うずみ火)

加計学園は、岡山理科大学など26の大学・高校・中学などを運営する学校法人。理事長の加計孝太郎氏は安倍首相と米留学中に知り合い、首相自ら「腹心の友」と呼ぶ間柄だ。

大学を誘致したい今治市と、獣医学部を新設したい加計学園。両者にとっての壁が、獣医学部の「定員規制」。所管の文部科学省は「全国的に獣医師の数は足りている」として、1984年以降、既存の16大学以外に新設することを規制してきた。

今治市は「特区として規制緩和を」狙って2007年から計15回にわたって申請したが認められなかった。ところが、安倍政権でそれまでの構造改革特区から国家戦略特区に変わり、昨年11月の国家戦略特区諮問会議で獣医学部の新設申請が認められ、加計学園が獣医学部新設計画の事業者に決まったのは今年1月のこと。

市は加計学園と「岡山理科大学今治キャンパスに関する基本協定書」を交わし、建設費192億円のうち最大96億円の建設補助金の支給を明示。その一方で両者の間で「土地無償提供契約書」が締結され、36億7500万円相当の市有地(16.8ヘクタール)を無償で譲渡することが決められた。

市議会も、これらの基本協定書と譲渡契約書を承認している。

市が市民説明会を初めて開いたのは4月11日。すでに建設が始まっていた。
事態が急展開したのは5月17日。文科省が作成した「総理のご意向」文書が見つかったと朝日新聞が報じた。昨年9~10月に内閣府と文科省がやり取りを記録した複数の文書で、前文科事務次官の前川喜平氏が「文書は存在した」「行政がゆがめられた」と記者会見。再調査を命じた文科相が文書の存在を確認したのは15日、通常国会の事実上の会期末の前日のことだった。

◆国は1円も出してくれない「誘致反対」6割

加計学園獣医学部の設立について、市民はどう思っているのか。
「国がお金を出して獣医学部をつくってくれると勘違いしている今治市民もいます。でも、国は1円も出してくれない。国家戦略特区で大学をつくるのに、なぜ、自治体が全額負担しなければならないのか」と疑問を投げかけるのは、「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川敦彦さんだ。

会では、市内の電話帳記載の世帯に対してコンピュータを用いてランダムに抽出した世帯への電話調査を行い、5月末にまとめた。1万件を超える調査で826人から回答を得た。

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