教育出版の道徳教科書には突出した特色がある。現職政治家の写真だ。
小学5年の教科書には東京の町工場を舞台にした「下町ボブスレー」が登場するが、半ページを占める写真にはボブスレーに乗り込み得意満面の安倍首相が写っている。元ラグビー選手に関する教材では、花園ラグビー場のある東大阪市の義和市長と選手との2ショットが。東大阪市の中学校では公民の教科書に育鵬社版が使われている。
「育鵬社は今回、小学校道徳の発行を断念しました。その代わりとなる教科書をつくるため、関係者を送り込んだ可能性があります。教育出版側からすれば、育鵬社の教科書を採用している地域での採択が確実に見込めますから」(相可さん)。
育鵬社は中学の道徳教科書の参入を目指しているとされるが、今回のように見送る可能性もあると見られている。「子供と教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は「シェアの大きい大手教科書を隠れみのとする手法をとるのではないでしょうか」と推測する。
俵さんによると、首相に近い赤池誠章参議院議員が教育出版の教科書採択を支援する動きがあるという。
「各社の教科書を『愛国心にそった教材がほとんどない』と批判し、教育出版が唯一及第点だとして教科書展示会に参加し、意見を書くよう呼びかけていました。これまでも育鵬社版採択を推進してきた赤池氏が教育出版を支援しているのは、育鵬社側が、教育出版を『代役』と位置づけているからだと思います」(続く)
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