元中学社会科教師で、教科書問題に長年かかわってきた「子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会」の相可文代さんは、若い教師らを対象にした学習会で、教科化の意味するものを説明してきた。質疑応答ではいつも、「道徳を教えることに反対なのか」と聞かれるという。そのたびに「いいえ」と答え、こう続ける。「個人よりも国家を重んじ、国家のために命を賭けることが正義だと教え、社会の責任を問わず、自己責任をすり込む道徳教育に反対しているのです」
第2次安倍政権が、道徳の必要性を説く「根拠」としたのが「いじめ」だった。11年の大津市の中2自殺でいじめが社会問題化、教育再生実行会議は13年2月、道徳の教科化を提言するが、その理由は「いじめをなくすため」。皮肉にも、事件があった中学校は当時、文科省が指定する道徳のモデル校だった。
安倍政権は揺らいでいるが、教育現場には、周到に準備されたレールが隅々まで敷かれている。(終わり)
【合わせて読みたい記事】
◆ 「道徳」、正式な教科に~安倍政権が推進する「教育再生」とは(1)
◆ 森友学園問題とは何か~教育界に迫る戦前回帰と右翼運動(上) 新聞うずみ火
◆ 写真で見る金正恩の「社会主義道徳」教科書 徹底した忠誠心養成
1 2