◆国は「条件付けてない」
さいたま市保健所疾病予防対策課は当初から「環境省と調整した結果、現状の検診となった」と説明してきた。同省が委託元である以上、当然のことだ。問題は受診できる対象者を狭める条件をさいたま市と環境省のどちらが提案したのかということだ。
8月21日に環境省石綿健康被害対策室の三山江穂主査に確認したところ、「基本的には自治体からこういった形でやりたいとかやれますとご意見をいただいて、矛盾がないか、無理がないかとか確認した後、私どものスキームとの大きなずれがないかみて、問題なければお願いしますとなる」と形式的には同省の委託事業ではあるが、どのような条件とするかは自治体側に任せてきたと説明する。
今回のさいたま市の事業内容についても「自治体からそちら(同市大宮区と中央区)の2区でできますと提案があった。(1982年以前の在住者との)時期も指示はしてない」と三山主査は話す。
同市保健所疾病予防対策課に環境省の見解を伝えると、市は「両者の調整の上で場所は決まったと考えている」と強調する。
だが、こうも明かす。
「今回が初めてということもあり、場所的に接している両区ということで(市から)ご相談させていただいた。環境省からはこの地区にしなさいとかといったことはいわれていない」
同省の説明どおり、市が中央区と大宮区の2区を対象地域とすることなどを提案し、同省はそれに同意したというのが、今回の検診が始まった経緯である。つまり、受診要件を狭める措置はさいたま市側の提案による。
環境省が対象区域を狭めることに異議を唱えていれば、範囲を狭めるようなことにはならなかったとはいえる。ただし、同省としては、自治体の要望を聞く形でこの健康調査は実施されてきたことから、基本的にどのような条件とするかは自治体の自主性に任せてきたとの事情がある。
これを自治体任せと国を批判するか、自治体側の不勉強というべきか。いずれにせよ、各自治体での対応状況は前回報じたように、公表している条件よりも実際には緩く運用している。つまり、それだけ運用レベルで柔軟に対応している。
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