◆いまだ「検診拒否」を継続
「以前に」というのは8月3日に被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(小林雅行会長)が対象区域の拡大などを求めて要請に訪れるより以前との意味だ。その際、対象地域外と不当に狭めて断ったあげく連絡も取れないのでは地域拡大した際に知らせることもできないではないかと指摘を受けた結果、今後は少なくとも連絡先は聞くようにすると回答していた。
では、8月3日以降にも同様の理由で受診拒否をしているケースがあるのか。
同課は「3~4人」いると明かした。合わせて8~9人となる。
検診に申し込んだのは8月17日段階で56人。わずか1カ月程度との短い申し込み期間ながらそれだけ市内で不安に思っている人たちがいるということだ。
さいたま市は今後もひたすら断り続けるのか。
市側は「現在検討しているところ」と答えるのみだ。
上記の日本エタニットパイプの下請け会社で5年間働いた母親を中皮腫で亡くした被害者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」関東支部世話人の松島恵一さんは「断った人が10人近くにもなるんですか。言葉は乱暴かもしれませんが、私たちの求める隙間のない救済からすると隙間になってしまう。その意味で被害者の切り捨てと感じる。対象区域を絞っていることにしても、定員にしても、最初からほかの自治体のように全市とか定員なしにすればいいだけ。難しいことだとは思えない。実際、環境省が自治体でできるなら区域を増やして良いといっているなら、今年度中に実施すべきでしょう」と指摘する。
環境省は検診対象の区域拡大などに一切反対しておらず、今年度中の対応についても「構わない」と明言している。
市側は現段階では明確に返答はしないが、来年度の地域拡大をちらつかせる一方、今年度は対応せず放置するかのような説明を繰り返している。
さいたま市は、いまだ対応しない「理由探し」を続けるのだろうか。【井部正之/アジアプレス】
【合わせて読みたい記事】
◆ <アスベスト被害>実態調査すら結論ありきか?(井部正之)
◆ <アスベスト被害>国の周知不足で2人が請求権喪失(井部正之)
◆ <学校アスベスト問題>教員ら178人が被害も労災認定わずか(井部正之)