被害者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」らが6月24日に尼崎市で開催したアスベスト被害の救済と根絶をめざす集会のようす。稲村和美市長も出席した(井部正之撮影)

 

◆市長出席の会議でうたた寝も

兵庫県尼崎市が8月7日に開催したアスベスト対策会議では出席した局長級幹部から何の質問も出なかったうえ、会議中に居眠りする局長が2人いるなど、アスベスト被害の“震源地”でさえ風化が進んでいることが感じられた。

同会議は尼崎市における「アスベスト問題について協議し、総合的な対策を推進することを目的」としており、市長をはじめ副市長、教育長、医務監のほか各局長が出席する市幹部による会合で、現在は年2回開催している。

8月7日、被害者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」尼崎支部の関係者と傍聴した。

会合では市内でいまだアスベスト被害が増え続けている状況が環境省資料により説明されたほか、市内でのアスベスト検診の状況、3月に佐賀県鳥栖市など4市と共同で国に提出したアスベストを吸った人びとに対する恒久的な健康管理システムの整備やアスベスト工場と被害者の因果関係の立証などの要望などについて報告された。

この日の会合は40分ほど。稲村和美市長が質問し、担当課が説明する繰り返しが続く。

だが、市幹部から質問は一切出ず、議論もまったくない低調ぶりだった。それどころか局長2人がうたた寝するすがたもみられた。これに気づいた傍聴者は顔をしかめていた。

会合後、尼崎労働者安全衛生センターの飯田浩事務局長は「市の幹部がアスベスト問題を理解するうえで最低限の役割は果たしているが、あまりにも議論が低調すぎる。緊張感がなくなっているのではないか」とため息をついた。

尼崎市のアスベスト対策会議はもともと12年前の2005年6月末、市内にある機械メーカー・クボタの旧神崎工場周辺で関連する職業歴のない住民にアスベスト被害が判明。アスベスト工場周辺における“公害”が社会問題となった結果、その対応のために同9月に設置されたものだ。同時期に国をはじめ全国各地の自治体で同様の会議は設置され、その多くは数年で開催されなくなった。

12年経ったいまでもそうした会議を継続し、しかも傍聴可能としていることからも、尼崎市がアスベスト対策に力を入れていることは間違いない。しかし、それでも“震源地”たる同市における会議の現状はいかがなものだろうか。【井部正之/アジアプレス】

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