◆電気のない日常生活
1日2~4時間しか電気がない家庭生活とは一体どういうものか。人びとはどのように暮らしているのか。ガザ地区中部の街ハンユニス氏の知人の家庭の2日間滞在してみた。
1日4時間ほどの電気が回復すると真っ先に、10人家族のこの家の主人ハリーム(54)がやるべきことは、屋上に置いた水タンクに電気モーターで十分に水が汲みあげられているかどうかを確認することだ。かつて2個しかなかった水タンクを5個に増やした。長い停電で水が十分汲み上げられていないと、シャワーや炊事、トイレの水にも事欠くことになるからだ。
子どもたちはすぐに充電式電灯の充電を開始する。停電した夜の暗闇の中、子どもたちの勉強や、台所での仕事、夕食時には不可欠な灯りとなる。耐えがたいのが暑さだ。海に近いため湿度も高い。でも扇風機も使えない。室内ではなかなか寝付かれず、屋上や窓の多い部屋で寝るしかない。
「電気不足はガザではずいぶん以前からの問題でしたが、この2ヵ月ほどは特に住民は苦しんでいます」と主婦のファトマ(53)は言う。
「冷蔵庫に保存していた食料が、この暑さの中の停電で全部腐ってしまうんです。水不足で台所での皿洗いもままなりません。子どもたちも電気の灯りがないため、充電電灯やろうそくの下で勉強しなければなりません。また水不足でこの夏の暑さの中でもシャワーも十分浴びることもできないし、洗濯も思うようにできない。電気がないのはいくらでも辛抱できますが、水がなくて生活するのは不可能です」
「どうして発電機を使わないのか」と尋ねると、ファトマは「発電機を買う金もない家庭は多いんです。うちは買ったのですが、音がうるさくて、隣近所に迷惑をかけてしまい、使うのを止めました」と答えた。
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