◆有志連合とアサド政権軍双方が空爆 病院、医師不足で死者急増
武装組織イスラム国(IS)の支配地域の住民は、連日、アサド政権のシリア政府軍や米軍主導の有志連合軍の空爆にさらされている。負傷しても医療施設が不足しているため、死者は増える一方だという。しかし、住民たちの状況はなかなか伝わってこない。メディアグループ「ラッカは静かに虐殺される」の地下活動家、イブラヒム・アルラッカウィ氏は、市内各地の現場に足を運び、住民たちの声に耳を傾けてきた。2015年2月にラッカと直接電話でインタビューした記事を特選アーカイブとして掲載する。最終回。【聞き手:玉本英子】(全5回)
(※2015年初出のアーカイブ記事。情報等は当時のまま)
<空爆下のラッカ 学校・大学も1年間ストップ>
◆学校や大学はどうですか?
アルラッカウィ氏:この1年間、学校も大学もストップしたままです。これまでモスクの中で小 さい子どもにコーランを教えるようなことは続いていました。教えているのはISの支持者などです。最近では一部の一般の学校も再開し始めていますがカリキュラムはISの方針に沿った、アサド政権時代とは大きく異なっています。
◆ラッカの医療施設はどういう状況ですか?
アルラッカウィ氏:市内では医療施設が足りません。ISが支配する以前は15の病院がありま したが、今は6つで、そのうちのひとつである国立病院は医師もおらず設備もなく、1年以上機能していません。他の5つは民間病院で治療費が高く、お金のな い一般市民は行くことができません。市民が利用できる医療機関がないのです。現在、米軍主導の有志連合軍と、アサド政権軍がそれぞれ空爆をしています。多くの市民が負傷していますが、ここには手術などに対応できる施設も乏しく、治療できずに亡くなる人が増えています。
◆すでに町から脱出した医師が多いということでしょうか?
アルラッカウィ氏:そうです。そのためISは、町に残る医師の何人かを拘束して(負傷した戦闘員の)手術や治療をするよう強制しています。地元で長年働いてきた医師のひとりは、この1年間、拘束下におかれたまま治療に従事させられています。
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