モスル市民の多くが、イスラム教スンニ派です。私もそうです。しかし、私にはシーア派やクルド人の親戚がいます。私の兄の奥さんはクルド人で、私の叔母の夫はシーア派です。学生時代の一番の親友はクルド人とシーア派です。キリスト教徒やヤズディ教徒の友人もいます。モスルでは様々な民族宗教の人びとがともに暮らしてきたのです。
私たちはこれまで愛し合い、助け合いました。それがISのようなグループによって引き裂かれてしまいました。こんな悲しいことはありません。ISは去りましたが、コミュニティがかつてのような隣人関係に戻るのにはまだ時間がかかると思います。
モスル大学は2014年までイラクでトップクラスの大学でした。教師のひとりとして、イラクの将来のために尽くさなければなりません。ISのような過激主義に利用されないようにするには教育が必要なのです。この町が昔のモスルに戻れるのかどうかは分かりません。それでも希望を失わずに、今後も教えていきたいと思います。
最後になりますが、日本の皆さんが私の話に耳を傾けていただき感謝しています。ISの実態が日本でどこまで伝えられているかわかりませんが、イラク人すべてがあんな凶悪な人間とは思わないでください。私は日本のことが好きです。子どもの頃にテレビで観た日本のアニメ、グレンダイザーは、いまでもよく覚えていますよ。これからも日本の皆さんがイラクのことに関心を持ち続けていただければ嬉しいです。(終わり)
(9終) IS去ったモスルのこれから(写真9枚)
(8) 当初、ISを受け入れたモスル住民も~「気づいたときは遅かった」(写真12枚)
(7) IS支配下での礼拝とモスク(写真8枚)
(6)「モスル解放」のなかであいつぐ報復(写真11枚)
(5) 衛星テレビ視聴禁止布告~住民統制強まる(写真14枚)
(4) 学校での洗脳恐れ、通学やめさせた家庭も(写真9枚)
(3) 宗教警察が社会統制(写真10枚)
(2)シーア派やキリスト教徒住民への迫害(写真7枚)
(1)たった数日間の戦闘で町のすべてを支配(写真7枚)
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