◆CT検査は「医師の判断」に変更
肺がん検診は胸部レントゲン検査と喀痰(かくたん)検査を組み合わせたもので、その結果必要があれば精密検査として胸部CT検査などを実施する。この場合、CT検査は医療行為のため検査費用の自己負担が生じる。
環境省案では最初にアスベスト曝露歴を聴取し、その後胸部レントゲン検査と喀痰(かくたん)検査、医師による問診を行う。レントゲンなどの結果、医師が必要と判断した場合のみ胸部CT検査を受ける。この際のCT検査費用は無料という。
これまでのアスベスト検診では職業的にアスベストを扱っていた経歴があったり、アスベスト製品の工場周辺に長く住んでいたなど、曝露歴がある可能性の高い場合や本人が希望すれば、最初に胸部CT検査を実施していた。
ところが、新たな案ではレントゲン検査が必須となり、CT検査は「医師の判断」による。あくまで必要があれば実施するという位置づけで、本人の希望で受けることもできない。
この方針案に対して、オブサーバーとして会議に参加した実施自治体から「がん検診とは乖離がかなりある」「厚生労働省との調整が必要」「これには取り組めない」などと異論が続出。環境省は現在アスベスト検診を実施している自治体は現状の方式を継続して問題ないと説明し、ようやく収まった。
被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(小林雅行会長)事務局の片岡明彦氏は「もし本当にそうするとしたら、アスベスト検診の体をなさなくなる。それは単にCT検査が無料の肺がん検診になってしまう」と懸念を示す。( 続きを見る >> )【井部正之】
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