◆見落としも織り込み済みか

新たな検診案が定着すれば、結果として有所見率を減らすことになり、アスベスト被害がまたも「見えなくなる」のではないか。

すでに指摘したように当日の会議でさえ問題になっているレントゲンにおける見落とし問題について、環境省が知らないはずがない。仮にそれが目的でなかったにせよ、そうした結果を生むことを認識していなかったことなどあり得ない。

おそらくはCT検査が減り、レントゲン検査による見落としで有所見率が減ったとしても「放射線曝露を減らす」「入口を広げて受診者を全国に増やす」との“大義名分”があるから構わないと判断したのであろう。

早期発見できれば早く治療ができるため、それだけ予後も良くなる。だからこそアスベスト検診で早期発見につなげることが同省の掲げる目的の1つではなかったか。今回の新たな検診案はそれをかなぐり捨てたものであり、きわめて罪深い。

同省はアスベスト検診に今年度2億円を予算計上している。あえて見落としが多い方式に変更して浪費する必要はなかろう。あるいはそれが目的とでもいうのだろうか。

前出・片岡氏はこうも指摘していた。

「環境省はアスベスト検診を肺がん検診に組み込んで手を抜くようなことばかり考えてないで、(受診者の)放射線被曝をできるだけ少なくできて、精度のいい方法、例えば低線量CT検査によるアスベスト検診を拡げるのにもっと頭を使えと言いたい」(了)【井部正之・アジアプレス】

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